iDeCoの主なデメリットとして挙げられるのは以下の3つです。
①積み立てたお金は原則として60歳まで引き出せない
②手数料が掛かる(開始時、毎月、受け取り時等)
③運用に失敗した場合、受取額が掛金より低い金額になる可能性がある
これらの3点について検討していきたいと思います。
積み立てたお金は原則として60歳まで引き出せない①
iDeCoを利用して積み立てている掛金は、加入者が死亡した場合や障害を負った場合など一部の例外を除き、原則として60歳まで引き出すことができません。
通常の預貯金、株式や投資信託と異なり、急な出費が必要になった場合にも引き出すことはできません。
しかし、これは自分で掛金が設定できることや、月額5,000円を下限として掛金の変更ができること(4月から翌年3月までの1年の間に1回だけ)、掛金の積み立てを停止できることを考えると、特に大きな問題にはならないように思います。
ライフプランを設計して余裕資金をiDeCoを利用して積み立て、想定外の大きな変化があった場合には掛金を月額5,000円まで減額することで対応可能ではないかと思います。
掛金の積み立ての停止は、口座維持手数料がかかってしまうので、最後の手段とした方がいいかと思います。
積み立てたお金は原則として60歳まで引き出せない②
60歳まで無事に掛金の積み立てが終わり、いざ受け取ろうとした際に、リーマンショックのような株価の下落があって運用した掛金に大幅な損失が生じる可能性もあるはずです。このような場合にiDeCoは対応可能でしょうか。
この点、iDeCoは、60歳になった時点で必ず受け取らなければならないものではなく、60歳から70歳までの間であればいつ受け取ってもよいことになっています。(確定拠出年金法33条1項、34条参照)
以下のグラフは、リーマンショック前後のダウ平均株価とS&P500の値の推移を示したものですが、このグラフからも明らかなように、リーマンショックのような大幅な株価の下落があった場合でも、5年あれば株価は下落前の水準に回復しています。
このようなことを考えると、60歳時に株価の大幅な下落があった場合であっても、5年前後iDeCoの受け取りを延期し、(待っている間の口座維持手数料は掛かりますが)株価が回復したところでiDeCoを受け取る、ということで対応可能ではないかと考えます。
運用に失敗した場合、受取額が掛金より低い金額になる可能性がある
iDeCoは、掛金を自らの責任で運用する制度である以上、運用に失敗して損失が出た場合には、将来の受取額が拠出した掛金の合計より低くなってしまう可能性もあります。
しかし、前回のメリットの検討の際に述べたように、受取時に税制優遇措置がある結果、一時金として受け取る場合には、具体例として挙げた事例では12.5%の節税効果が得られ、年金として70万円を5年に分けて受け取る場合には、20%の節税効果が得られます。
したがって、運用に失敗した場合であっても、運用損(正確には運用損と手数料等の合計金額)が拠出した掛金の合計の12.5%を超えない限り、トータルで損失は出ないことになります。
iDeCoで運用可能な金融商品には様々なものがありますが、しっかり検討して商品を選択すれば、世界経済が今後も成長する可能性が高いことを考えると、長期投資の場合に12.5%もの損失を出す可能性は少ないのではないかと考えています。
今日のまとめ
- 積み立てたお金は60歳まで引き出せないが、余裕資金を拠出し、大きな変化があった場合は掛金の変更を行うことで十分対応可能
- iDeCoの受け取りは60歳から70歳までという10年の間で選択して行うことが可能なため、リーマンショックのような一時的な大幅な株価の下落にも対応可能
- 税制優遇措置を超える損失が出る可能性は少なく、受取額が掛金より低い金額になる可能性は少ないのではないか