楽天VTI(実質コスト)と本家バンガードVTIの運用結果を比較検討してみました


9月19日に、楽天・バンガード・ファンドの交付運用報告書が公開され、以下のファンドの実質コストが明らかになりました。
  1. 楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天VT)
  2. 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)
  3. 楽天・新興国株式インデックス・ファンド(楽天VWO)
  4. 楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド(楽天VYM)
今回は、このうちの楽天VTIについて、まず①実質コストの計算方法を紹介し、②今回の実質コストが運用結果にどのような影響を及ぼすかという点を、本家VTI等と比較しつつ検討していきます。



楽天VTIの実質コストの計算方法


今回の楽天VTIの運用報告書は、2017年9月29日から2018年7月17日までという1年未満の期間の合計コストが示されています。

そのため、まずは以下の楽天VTIの交付目論見書と運用報告書の赤枠部分を参考に、1年間の実質コストを計算していきます。

交付目論見書より

運用報告書より

交付目論見書では、1年間の信託報酬は0.1296%となっています。そして、これから求める1年間の合計コストをXとします。

一方で、運用報告書では、2017年9月29日~2018年7月17日の間の信託報酬は0.097%、合計コストは0.203%となっています。

これらを、昔習った比の計算に当てはめて、まずは楽天VTIの合計コストを算出します。
【1年間の合計コストの計算】
 0.1296:X = 0.097:0.203
 0.097X = 0.203 × 0.1296
 X = 0.203 × 0.1296 ÷ 0.097
 X ≒ 0.2712
1年間の実質コストは、この値に本家VTIの信託報酬手数料(0.04%)を加えれば求められます。
1年間の実質コスト = 0.2712 + 0.04 = 0.3112%
以上から、楽天VTIの1年間の実質コストは0.3112%であることが分かりました。

交付目論見書では、信託報酬手数料が0.1696%と記載されていたので、それと比較すると約2倍程度高くなってしまっています。

楽天VTIの実質コストが運用結果に及ぼす影響


それでは、算出した楽天VTIの実質コストは、運用結果にどの程度の影響を及ぼすのでしょうか。

通常想定される6つのパターンで、毎月5万円、20年間積み立てを続けた場合の比較を行ってみた結果が、表1のとおりです。

楽天証券で楽天ポイントを得ながら楽天VTIを積み立てていく場合が、パターン1と3です。このうち、パターン3が、今回判明した実質コストで運用し続けたものとなっています。

また、楽天証券以外で楽天VTIを積み立てた場合には、楽天ポイントが付与されないため、パターン2または4になります(2と4の違いは実質コスト)。

最後に、楽天VTIではなく、直接本家VTIを購入する場合が、パターン5と6です。このうち、NISA口座で購入するなどして購入時手数料がかからないときがパターン6です。

表1

この表からすると、1番運用結果が良いのは、購入時手数料をかけずに本家VTIを購入するパターン6であることが分かります。

続いて、一番成績のよいパターン6、楽天VTIを最もよい条件で積み立て続けたパターン1と、最も悪い条件で積み立て続けたパターン4をグラフにしたものがこちらです。




今回の検討結果についての所感


楽天VTIについては、今回の実質コストが想定より高くなってしまっています。また、楽天ポイントの付与が今後20年間継続されるかも分かりません。

そのため、本家VTIを直接購入した方が、最終的にはよりよい運用結果を得られるようにも思えます。


ただ、一方では、楽天VTIは、一度設定をしてしまえば毎月自動で積み立てが行われることから、毎月手動で購入する必要がある本家VTI(※)と違って、管理に手間がかからないというメリットもあります。
※証券会社によっては毎月自動積立を行うことも可能。

そして、最も成績がよかったパターン6と、最も成績が悪かったパターン4の差額は約62万円となっており、元本1,200万円に占める割合は5%程度でしかありません。

また、今後、実質コストが下がっていく可能性も考えられます。

以上のようなことを考えると、直接本家VTIを購入するのではなく、楽天VTIを積み立てていってもよいようにも思います。


今日のまとめ


  • 2018年9月19日、楽天VTIを含む楽天・バンガード・ファンドの実質コストが明らかになった。
  • 楽天VTIの実質コスト(0.3112%)は想定より高く、運用結果にマイナスの影響を及ぼすことになる。
  • 楽天VTIの積み立てを行うかどうかは、今回の実質コストが運用結果へ与える影響や、管理のしやすさなど、様々なメリット・デメリットを比較して行うこととする。