NISA制度の恒久化は実現するか?金融庁の税制改正要望を踏まえて考えてみました

金融庁平成31年税制改正要望項目より
平成30年8月31日に、金融庁が平成31年度へ向けての税制改正要望項目を発表しました。

要望項目の中には、「NISA制度の恒久化」が含まれており、NISA制度の恒久化への期待が高まっています。

今回は、①恒久化の意義と、②要望の実現可能性について考えてみました。



恒久化の意義について


NISA制度のうち、例えばつみたてNISA制度は、毎年40万円まで、最大20年間の資産運用について、分配金や譲渡益が非課税になるという制度です。

言い換えると、つみたてNISA制度では、毎年40万円×20年=合計800万円まで非課税で資産を運用することができます。

ただし、このつみたてNISA制度は、以下のように平成49年までとされています。

○租税特別措置法
第34条の14第5項第1号イ
非課税累積投資契約 平成三十年一月一日から平成四十九年十二月三十一日までの期間

これらを踏まえると、NISA制度の恒久化等における「恒久化」の意義については、平成49年までという時限措置を撤廃するという方向での要望だと考えます。

というのも、金融庁の資料でもあるように、平成30年からつみたてNISA制度を利用した者は、平成49年までの20年間、最大800万円を非課税で運用することができます。

しかし、現在の制度では、平成35年からつみたてNISA制度の利用を開始した者は、平成49年までの15年間、最大600万円(毎年40万円×15年)しか非課税で運用することはできません。

このように、今回の金融庁の要望は、NISA制度の利用開始が遅れれば遅れるほど、非課税で運用できる金額が減っていくという不均衡を無くすためのものだと考えます。


最大20年というつみたて期間を無期限にして、非課税で運用できる上限額(800万円)を撤廃するものではないと思っています。


要望の実現可能性について


実は、金融庁は平成28年から毎年、NISA制度の恒久化を要望しています。

これまでも要望していたにもかかわらず、それが実現していなかったことを考えると、今回もこれまで同様に実現しないのではないかと考える方も多いのではないでしょうか。

しかし、私は、以下に述べる理由から、今回は金融庁の要望が実現する可能性が高いのではないかと考えています。

まず、国は、少子高齢化で公的年金制度が限界を迎える可能性があることから、NISAやiDeCoという制度を創設し、国民自らこれらを活用して老後資金を積み立ててほしいと考えているものと思われます。

そして、以下の金融庁の資料からもわかるように、国の想定通り、つみたてNISA制度はNISA口座の増加に大きく貢献しており、国はこの流れを維持したいはずです。


そのような中で、今回NISA制度の恒久化を行わなかった場合には、前述のとおり、来年以降にNISAを開始する者は非課税で運用できる上限額が年々減少していくことになります。

これでは、NISA制度を利用したいと考える者も年々減っていく可能性が出てきてしまいます。

このようなことを起こさないためには、今回のタイミングでNISA制度を恒久化しておくことが必要なので、今回は実現可能性は高いのではないかと思います。

平成30年の12月には与党の税制改正大綱が公表されますので、その時に答え合わせをしてみたいと思います。


今日のまとめ


  • 金融庁の平成31年度税制改正要望項目では、NISA制度の恒久化が挙げられている
  • 「恒久化」とは、平成49年までという時限措置を撤廃することだと考える
  • 恒久化の目的は、制度の利用開始が遅くなればなるほど非課税で運用できる上限額が低くなるという不均衡を是正するためと思われる
  • 恒久化については、これまでも金融庁の要望項目に挙げられていたが、今回は実現可能性が高いのではないかと考えている