証券会社の倒産に備える ~つみたてNISA利用者の場合~

前回、証券会社が倒産した場合の投資家保護制度としては、①分別管理制度と②投資者保護基金の2つがあることを紹介しました。

今回は、つみたてNISA利用者が、証券会社の倒産に備えて何かできることはないか考えてみました。


つみたてNISAと投資者保護制度との関係


つみたてNISAとは、40万円/年を上限とする投資枠が20年間与えられ、その枠内で投資信託等を運用して得られた分配金や譲渡益が非課税となる制度です。

つみたてNISAの枠内で購入した投資信託等についても、前述の①分別管理制度と②投資者保護基金により保護されることになります。

ただ、例えば40万円/年を年率5%で20年間運用した場合には、17年目の時点で投資者保護基金の補償額の上限1,000万円を超え、20年目の評価額は1,370万円になります。

このように、つみたてNISAの評価額が1,000万円を超えた後に、分別管理を怠っていた証券会社が倒産した場合、1,000万円超の部分について補償は受けられなくなるのです。

なお、1900年~2006年12月までのアメリカ株の年率リターンの平均は6.2%なので、このような状況になることは十分に考えられます。


つみたてNISA利用者ができることはないか?


2つの証券会社で20万円/年ずつ分けて運用することができればこのような事態は防げますが、つみたてNISAの口座は1つの証券会社にしか開設できません。

したがって、つみたてNISAの評価額が1,000万円を超えた場合に、何らかの保護制度を活用して全額補償を受ける方法はないと思われます。

ただし、つみたてNISA枠内の金融商品とその他の金融商品を2つ以上の証券会社に分けて保有しておけば、その他の金融商品を守ることができます
証券会社が倒産することはまれで、その場合でも投資家の資産は分別管理制度により保護されることを考えると、ここまでの対策は必要ないように思います。

ただ、今回は頭の体操と考えの整理も兼ねて、証券会社が倒産した場合に備えて、つみたてNISA利用者が何かできないか考えてみました。


今日のまとめ


  • つみたてNISAの20年後の評価額は、投資者保護基金の補償上限額1,000万円を超える可能性がある。
  • そのような場合、何らかの保護制度を活用して全額の補償を受ける方法はないと思われる。
  • つみたてNISAとその他の金融商品を2つ以上の証券会社に分けて保有しておくことで、投資者保護基金を十分に活用することができる。