ジョン・C・ボーグルとは、世界第2位の投資信託会社「バンガード・インベスツメンツ」の創始者で、最も成功した投資家の一人として知られている人物です。
今回は、2018年5月13日に発売されたジョン・C・ボーグル氏の著書、「インデックス投資は勝者のゲーム」を紹介します。
この本の内容としては、表紙に書いてある「市場全体のポートフォリオを有するファンドを取得し、永遠に持ち続けること」ということを詳しく説明するものとなっています。
インデックスファンドの優位性
ボーグルは、以下の点から、アクティブファンドに対するインデックスファンドの優位性を説いています。
インデックスファンドは、ダウ平均やS&P500などの指標と同じような動きを目指すファンドです。
一方で、アクティブファンドは様々な運用方針に沿い、市場の平均以上の利益を出そうとするものです。
- 株式市場全体のリターンとコストの関係
- インデックスファンドとアクティブファンドの過去のリターンの比較
- アクティブファンドの平均回帰性
株式市場全体のリターンとコストの関係
まず、ボーグルは、株式市場全体のリターンとコストの関係から、インデックスファンドの優位性を述べます。
投資家が得るリターンは、株式市場全体のリターンからコストを引いたものになるため、コストが少なければ少ないほど、投資家は株式市場全体のリターンを丸々得られることになります。
この点、アクティブファンドのコストはインデックスファンドと比較して高いことから、どうしても投資家が得るリターンは少なくなってしまいます。
例えば、株式市場全体のリターンが7%、アクティブファンドのコストを2%とすると、年間リターンはたった5%(=7%-2%)になります。
これに対して、インデックスファンドはほとんどコストが掛からないため、7%のリターンを丸々得ることができます。
ちなみに、この2%の違いは、1,000ドルを複利で運用した場合には以下のように現れます。
「インデックス投資は勝者のゲーム」より |
インデックスファンドとアクティブファンドの過去のリターンの比較
続いて、ボーグルは、2001年から2016年までの15年間で、90%ものアクティブファンドのがインデックスファンドのリターンに負けていることを示して、インデックスファンドの優位性を述べています。
これは、「敗者のゲーム(チャールズ・エリス著)」でも「機関投資家の動きの総和が市場全体の動きになることから、機関投資家であってもその7割前後が市場平均に負けている」と同趣旨の記載があり、感覚的にも理解できるのではないでしょうか。
アクティブファンドの平均回帰性
最後にボーグルは、ファンドのリターンは平均に回帰するというデータを示して、インデックスファンドの優位性を述べています。
例えば、2006年から2011年までの間にリターンが上位だったアクティブファンドは、2011年から2016年にはその87%がその地位から落ちていること等が示されています。
そのうえで、「過去のパフォーマンスに基づいて勝てるファンドを見出そうとするのは危険である。」と述べています。
ボーグルが勧めるアセットアロケーション
ボーグルは、以上のような理由を示してインデックスファンドの優位性について述べた上で、我々がやらなければならないこととして、以下のような趣旨のことを述べています。
わが国(米国)の企業が将来提供してくれるあらゆるリターンの公平な分け前を手にしなければならない。伝統的なインデックスファンドは、その目的の達成を保証する唯一の投資対象である。
そして、ボーグルは、その人のリスク許容度に応じて、以下の2つのアセットアロケーションを進めています。
- 投資期間が長く、かなりの胆力と度胸のある投資家、つまりそのときどきの市場の暴落にも動じない勇気のある投資家→S&Pインデックスファンドに100%投資する
- 投資期間が限られるor市場の暴落に心理的な影響を受ける投資家→株と債権を60対40に固定したバランス型インデックスファンドに投資する
気になった点など
非常に簡単に要約するとこのような感じなのですが、いくつか気になった点もありました。
例えば、ボーグルは、向こう10年間の実質年間リターンを1.5%程度とかなり低く試算しています。もし本当にこのようなリターンしか得られないのであれば、今後の色々な計画に影響が出てしまいますね…
また、アセットアロケーションに関して、コストを削減することでより低いリスクでより高いリターンを得られることについては、単純な計算ではあるのですが、そうした発想が私には全くなく、とても感心しました。
「インデックス投資は勝者のゲーム」より |
そして、ボーグルが以下のように述べている部分については、シーゲルと異なる見解であるので、それぞれの理由を詳しく調べてみたいと思いました。
- セクターファンドは非合理。個別銘柄に集中しているのと変わらないリスクがある。
- アメリカ以外の株式をポートフォリオに組み入れる必要などないし、いかなる場合でも、アメリカ以外の株式の割合は20%以下にすべき。
今日のまとめ
今回紹介したジョン・C・ボーグル著「インデックス投資は勝者のゲーム」は、インデックスファンドでの運用を行っている方にとっては新鮮味のない内容かもしれません。
しかし、文章も読みやすく、インデックス投資という戦略の優位性を再確認できることや、その他の気付きもあること等を考えると、読んでおいて損はないように思いました。